1.局所刺激性
 皮膚や粘膜に接触する可能性があり、その局所に障害をもたらす場合を考慮して、通常ウサギを用いて皮膚一次刺激性と眼粘膜一次刺激性が行われる。
【1-1】皮膚一次刺激性
検体の1回の適用により、適用局所に現れる発赤、浮腫、痂皮形成等を観察し、刺激性の強度を判定する。
【1-2】眼粘膜一次刺激性
検体の1回の適用によって生じる眼粘膜の刺激を、角膜、虹彩、眼瞼結膜並びに眼球結膜の障害発現の有無や程度により刺激性を判定する。
2.アレルギー試験
 検体と抗原性の有無を調べることであり、生じるアレルギー反応は、局所アレルギーと全身アレルギーに分けられる。殺虫剤では、主として局所アレルギーが検索される。動物としては、一般にモルモットが使用される。刺激を生じない最大量の検体を、数回皮内注射、塗布等の処理を行い、感作処置2週間後に、更に処理することにより誘発させ、24時間後の注射部位の所見(膨隆の直径、高さ、色調等)を観察し、アレルギー反応の大小を判定する。
3.吸入毒性
   一定濃度の検体を一定時間恒常的に、動物に吸入させ、呼吸器からの吸収による影響を調べることを目的とした試験である。単回吸入毒性試験は、単回投与試験の要領で50%致死濃度(Lethal concentration 50%, LC50)を求め且つ、暴露中の動物の行動や臨床症状を観察し、終了後は剖検し、特に、呼吸器系の病変を調べる。反復吸入毒性試験の試験群の設定、検査項目などは、経口投与による反復投与試験に準じる。
4.生殖に及ぼす影響に関する動物試験
   従来は胎仔の器官形成期に検体を投与してその影響を調べる、奇形仔形成状況等催奇形性試験に主眼を置いていたが、最近は、妊娠の成立、出生仔の成長、更にはその仔の生殖性への影響をも検索している。したがって次の3つの試験を行う。
(1)妊娠前及び妊娠初期投与試験
(2)胎仔の器官形成期投与試験
(3)周産期及び授乳期投与試験
動物としては、マウス又はラット等のげっし類及びウサギ等の非げっし類が使用される。
5.遅発性神経毒性
   検体を投与後、6〜14日間の潜伏期をおいて末梢神経を特異的に傷害する症状の発症の有無又は、その程度を調べることを目的とする試験である。通常は、成鶏が標準的試験動物として用いられる。この試験では運動失調が指標反応となるので、その臨床観察には、精密性が要求される。有機リン化合物、カーバメート化合物などのコリンエステラーゼ抑制作用を持つ化合物を試験対象とする。
6.変異原性試験
   細胞の遺伝子担体や染色体に形態的損傷を与え、ひいては、発癌性や遺伝性突然変異をひきおこす可能性を知るため、細菌や動物を使って行う試験である。変異原性を検索するためには、多くの試験があるが、主なものは次のとおりである。
(1)細菌を用いる修復変異試験(Ames法)
(2)哺乳動物類の培養細胞を用いる染色体異常試験
(3)げっし類を用いる小核試験
7.催腫瘍性(発癌性)
   検体を反復投与することにより、腫瘍発生率、腫瘍の病理学的な分類、組織特異性等を調べることを目的とする試験である。ほぼ、生涯にわたって、投与して調べることが多いので、反復投与(毒性)試験と合併して、同時に実施することが多い。一般的には、ラット、マウス又は犬が用いられる。経口投与が主であり、強制経口投与又は、飼料並びに飲料水に混入して摂取させることが多い。
8.一般薬理試験
   薬理学的手法を用いて器官機能に対する検体の中毒作用の強度や機序を評価する試験で、他に急性及び亜急性毒性反応も解析する。即ち、生体機能にどのような作用を及ぼすか?、その作用はいかなる機序によって起こるか?、作用用量は致死量のどの程度に相当するか?、急性中毒が発症したら、どのような中毒症であるか?、中毒症に対する対応法として、どのような処置が必要か等の点について検索される。
9.生体内動態(代謝)試験
   生体に暴露された検体が生体内に吸収され、生体内の各組織に分布し、代謝され、生体内から消失してゆく過程を検索することを目的とした試験である。標識化合物は強制経口投与か静脈注射で投与する。非標識化合物を連続投与してから標識化合物を投与する場合は、非標識化合物を混飼投与する。一般的には総放射能(一定の間隔で、糞、尿、血液及び呼気中の放射能)、吸収速度、見かけの半減期、生物学的利用率(経口投与された検体のうち、全身循環に入った部分の率)、臓器濃度、代謝物などを調べる。
 
*標識化合物 化合物の構成元素の一部を、放射性同位体(14C、35S、32Pなど)や安定同位体(13C、15N、18Oなど)元素で置換えた化合物をいう。これらの標識化合物は、トレーサー(物質の移動、変化の経過を追跡するために、目印として用いられる特異性をもった物質)として利用される。
 
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